第1話『バランストスコアカードとは』(2004/04/21)
医療機関のかたから「バランスト・スコアカード」(BSC)について教えてほしいというメールをいただきました。今後ますます医療機関でも導入されるケースがふえていくだろうBSCについてシリーズ化して触れていくことにしました。
「バランスト・スコアカード」(こんごBSCと呼びます)と呼ばれる経営管理手法は、90年代初頭にハーバード・ビジネススクールによって提唱された企業経営マネジメント手法でビジョンと戦略をビジネスユニットにアクションとして落とし込み企業が成長力と競争力を付け生き残るための戦略的マネジメント・システムです。従来、一般企業で行われていたものが近年医療経営の分野にも導入されてきています。病院全体で大きな目標を立て、経営サイドや医療現場でどうすれば達成できるかを考え、それぞれ数値目標を設け、達成度を定期的に評価して方法を修正、工夫を加えていくものです。米国では既に病院経営に広く利用され、国内でも聖路加国際病院、三重県立病院などで取り組みが始まっており道内の医療機関でも検討を始めています。その背景には、きわめて厳しい経営環境の中で多くの医療機関が業績を悪化させており、この状況から抜け出すためには従来とは異なる新たな経営管理手法が必要と考えられているようです。また、財務状況だけでなく、将来に向けた投資や患者の視点で考えるのがBSCで導入する医療機関が増えれば、全体的な医療の質も上がるものとおもわれさらにこういった数値目標は、患者にとって病院選びのひとつの指針となりそうです。
第2話『学会の紹介』(2004/04/29)
日本医療バランスト・スコアカード研究学会
バランスト・スコアカードを病院経営に導入するという目的で、日本医療バランスト・スコアカード研究学会が2003年11月に設立されました。日本大学商学部教授の高橋淑郎先生(学会長)をはじめ、財団法人聖路加国際病院院長の櫻井健司先生をはじめとして、医療経営に携わるたくさんの方々により運営されています。バランスト・スコアカードは、戦略的手法として汎用性が広く、様々な業種の人々が研究・応用しようとしています。この学会は、バランスト・スコアカードの医療への応用とその成果を共有するための議論の場、発表の場としています。
第3話『バランススコアカードの基本コンセプト』(2004/05/09)
今日のような情報化時代の企業にとって最も効果的なプランニングツールとして、従来の経理データに焦点をあてた業績評価に変わるものが求められていました。そこで、ハーバード大学の教授であるKaplan氏とNorton氏は企業活動を評価する4つの視点を紹介しました。
・財務の視点 (株主をいかに理解するか) --「財務的に成功するために、株主に対してどのように行動すべきか」というものです。具体的にKPIには、売上高、利益、EVA(経済付加価値)、ROE(株主資本利益率)といったKPIや、それらのKPIの構成要素である売上高利益率、資本回転率などが挙げられます。
・顧客の視点 (顧客をいかに理解するか)--「戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動すべきか」
という視点です。具体的指標には、顧客満足度や対象市場におけるマーケットシェア、新規顧客獲得数、クレーム発生率などが挙げられます。
・業務の視点 (成功のためにはどのような業務に優れていなければならないか)--「株主と顧客を満足させるために、どのようなビジネス・プロセスに秀でるか」という視点です。製造業における具体的指標には、開発効率、在庫回転率、生産リードタイム、改善施策提案数などが挙げられます。
・学習と成長の視点 (変化し、向上し続けていくためにはどうすればよいか)--「戦略を達成するために、どのようにして変化と改善のできる能力を維持するか」
という視点です。具体的には、資格保有率、従業員満足度、新技術開発数、特許出願数などの社員の能力開発や会社全体の知的資産がどれだけ蓄積されたかを表します。
BSC(バランススコアカード)の考え方は、財務的な数字で示されることの多かった業績評価指標を、戦略目的に即した4つの視点によるKPI(重要業績評価指標)にすることにより、多面的な評価が可能になります。