脳出血による障害の手記 
「もういちど 歩き出そう」      

第21話  言語リハビリについて

先日、この「手記」を見た方からメールをいただきました。やはり、去年脳出血のために言語に軽度の障害を受けたようでした。
特に病院でリハビリを受けたということでもなかったらしいのですが、ゆっくり話すときはなんでもないのですが早く話そうとすると若干ドモってしまうそうで「訓練」のやりかたを知りたいということでした。
わたしも軽度の言語障害をおこし、入院期間中に言語療法士によるリハビリをうけていました。
そんなことを思い出しながら「言語リハビリ」についてまとめてみましたので参考にしてください。

一般的に脳卒中と呼ばれている脳血管障害になった時に症状としては片麻痺、片方の手足の動きが悪くなるという状態になります。頭の中の右側から出た神経は、『延髄』と言われる所で、反対側の左の方に神経が行っています。延髄で交叉しているので、左側の方の脳の中に出血があったり梗塞があった場合に、右側の手足が動かなくなります。反対に右側の方にダメージがあった時には左側の手足に麻痺が起こるいう特徴を持っています。

しかし、同じ側にも1割ぐらいの神経が来ています。その神経は主に、足に来ています。だから、足というのは比較的早く歩けるようになるということらしいです。

ところが手の方は、反対側のところの神経が来ていないものですから、ダメージを受けると、なかなか回復してきません。それが手と足の回復という点で大きな違いです。

麻痺には次のように分類されます
1.運動神経の麻痺 
2.感覚神経の麻痺
3.器官系の神経の麻痺
4.高次脳機能神経の麻痺

今回は、言語をコントロールする4の「高次脳機能」のダメージについてふれてみます。

脳卒中で起こる言語障害には、「失語症」と、「構音障害」という二つに分かれています。

「失語症」には、「失語」「先行」「失認」という分け方があるそうです。

「失語」は、言葉を交わしてコミュニケーションをとるという言語機能が障害されたケースです。
頭の左側の脳に障害が起こった時、症状として右側の手足が不自由な場合に、失語症を起こしてきます。
「失語」にはさらに『運動性の失語』と『感覚性の失語』のふたつがあります。
脳の左側の前頭葉がダメージを受けた時に起こるものが『運動性の失語』。『運動性の失語』というのは、理解はできているんですけれど、言葉として作り出せない、喉まで出て来ているんだけれども言えないという、もどかしさを伴う失語が『運動性の失語』です。
そして、左側の脳にダメージが起こった時が『感覚性の失語』というもので、本人が理解しているか分からなく意味不明な言葉を発することもあります。聞いた事のないような言葉や理解出来ないような言葉が頻繁に出てくるものは『感覚性の失語』だそうです。

「失行」は左側の脳がやられた人に起こりやすいのですが、前まではちゃんと自分で出来ていた事が出来なくなってくる。たとえば、『そこに座って飲み物を飲んで下さい』というと、そこには行くが、そこでどうしたらいいか分からなくなる事があります。

「失認」というのは右側の脳がやられた時に起こりやすいのですが、今までちゃんとこれは新聞紙だとか、これはタバコ、これはコップだと分かっているんだけれども、それを取って下さいと言われても分からない事がおこります。

不幸中の幸いか?自分の場合はどうやら「失語症」はおこさずにすみ、軽度の「構音障害」だったようです。

専門書によると構音障害とは「構音に関与する肺、声帯、軟口蓋、舌、顎、唇の筋系および神経系の疾患に起因する運動機能障害が構音に影響を及ぼした結果としての症状で、発声発語器官の筋疾患、運動麻痺、協調運動障害などに由来している」とあります。

つまり、唇・舌・顔の筋肉であるとか、神経が、麻痺によって動きがうまくいかず、発音が難しくなるという事です。それによってはっきりした発音が出来ないなどの障害の事を構音障害と言います。
私も前にもふれていますが、舌・はぐき・頬・顎の右半分が発病後1年10ヶ月がたとうとしているいまでも麻痺しています。
10%位改善したか慣れたかぐらいの感じです。
このように顔の神経が麻痺してくる場合「運動障害性の構音障害」といいます。
運動障害性というの顔の筋肉を動かす神経が麻痺してしまうと、口を開けたり、唇・舌を動かしたりすることがしづらくなってきます。唇や舌が動きにくくなると当然発音も悪くなってきます。 とくに「サシスセソ」とか「タチツテト」が言いにくくなり、話が伝わりにくくなることがあります。これが構音障害の一番問題になってくる部分です。
自分ではわかりにくいケースがあります。
病院で言語療法士によるリハビリがスタートしてまもないころ、ある文書を読んで録音しておきました。その後、その病院を退院する直前に同じ文書を読んで録音し、以前に録音したものと一緒に再生して聞き比べしました。
その差はびっくりするほどでした。というよりも最初に録音したものの再生はひどく聞き取りにくいのにガクゼンとしました。
自分の中ではそれほど違いがないと思っていたのですが。その後も、親からも「いまだから言えるけど、随分発声がよくなったよ」といわれたものです。
しゃべりづらいとか、ろれつが回らない場合の言葉のリハビリは、まず口・唇や舌の動きの準備運動をやります。
次に、たくさん息を吸って何秒間続けて「あー」という声を出せるかを測ったりしました。
そしていろいろな短文を3度ずつ声を出して読み、どんな音が言いづらいのか、どんなふうに言いずらいのか把握します。
私は、やはり「サシスセソ」が言いにくく、これらの語が多く入っている例文を繰り返し読む練習を続けました。
退院したての頃は自己嫌悪に陥りあまり話したくありませんでした。しかし、いつまでもそのような状態でいられず気持ちを切り替えて積極的に人と会うように心がけました。もちろんいまでも100%戻ったわけではありませんが、電話で知らない人と話すのも苦痛ではなくなりました。
このように「サシスセソ」などの多く入った話しにくい文書を声を出して読む練習を1日に10分程度何回かに分けて行うのがいいようです。
それと、たくさん息を吸って「あー」と声を出す発声持続の訓練をすることです。長く息が続かないと、話が切れたり細くなって、聞き取りにくくなります。
実際に声に出すことが大切です。そして、たまに朗読などしてそれを録音し自分で聞き直し、注意する発音を認識することがいいのかもしれません。



(2003年04月29日)
  グリアTOP

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