脳出血による障害の手記  
「もういちど 歩き出そう」      

第23話  パワーリハビリ?について

この『手記』を見ていただきメールをいただいた山本さんから最近のリハビリ状況を掲示板に書き込みいただき、「パワーリハビリですか!」といった返信をしたのですが、気にかかって改めて自分で調べ直してみました。
その結果、今話題?なっている「パワーリハビリ」と私が思っていたものとちょっと違っていたので少し触れてみることにします。
まず第一に「パワーリハビリ」のパワーは力を意味するPOWERだと思っていました。
本当は、英単語の「roduce utcome to orthwhile for lder e-activation」(仕事率)の頭文字からつくられた名称だそうです。

パワーリハビリテーション研究会 :によると
パワーリハビリテーションは日本で開発されたもので、現在のところ、「対象は虚弱者から要介護5までで、要介護の高齢者の方などの、動作性と体力の向上を目的として、介護予防・自立回復・介護軽減を目指す、新しい運動プログラムということで健康な人が、より活発に動けるようになる筋力トレーニングとは違い、動けない人が動けるようになったり、健康だった時の生活スタイルを取り戻すために行うもの」だそうです。

それによって日常生活の動作をより活動的・安全に行うために、身体的なPowerの向上を図り、社会的活動・社会参加を促進する、総合的アプローチの事を言います。

パワーリハビリは単に機械類を使ったトレーニングのみならず、キーワードは「行動変容」です。年をとったり、あるいは何らかの障害を受けて、身体あるいは心理・社会的なすべての面で活動性が低下した人、これが要介護状態になるわけですが、こういう人たちにパワーアップを図る。これ自体は身体的な能力の向上あるいは改善になるわけですが、同時に活動への自信というものを引き出し、心身・社会的活動へ復帰することを大きな目標としています。

パワーリハの原理は、筋力を向上させる方法ではないという点であり、普段の生活で使われていない筋肉および神経の活動を引き出す、つまり、休眠中の神経・筋を活動の場面に引き出してくるということがパワーリハのコンセプトである。

パワーリハビリはトレーニングにより、動けない身体部分を動かすようにするのが目的である。
パワーリハビリは、筋力トレーニングに似ているが、筋力トレーニングとは全く異なる。筋力トレーニングは、健康な人がより活発に動けるように行うもので、パワーリハビリの目的である「動けない人を動けるように」とは異なるのである。パワーリハビリの最終目標は、動けない人が動けるようになった結果、健康だったときの生活スタイルを取り戻すことである。

虚弱・要介護高齢者の動作能力が低下する要因は、筋力低下によるものだけでなく、神経筋協調を含む総合的な動作能力の低下によるものである。そのため、マシントレーニングで神経筋協調や筋活動パターンなどを回復することが重要である。パワーリハビリは,単に筋力を鍛えるだけのものではなく,筋力を鍛えることで、身体活動に対する自信を持ち、さらに積極的に活動するようになる広がりをもったリハビリである。

具体的には・・・麻痺などで失われた機能は、リハビリテーションを行うことによって回復し、歩けるようになる。しかし、ある程度の速さで歩くことができなければ、横断歩道を渡ることはできないし、もちろんスポーツなどは無理である。つまり、日常生活をこなすにはスピードや耐久力が必要であり、そのためには筋力やバランス感覚など総合的な運動能力の改善を行うことが非常に重要なのである。

高齢者のリハビリに詳しい日本医科大学の竹内孝仁教授は、老化を体内に多数ある筋肉とそれにつながった神経細胞が少しずつ使われなくなっていくために起きていることに着目した。
特に脳血管障害等による後遺症などでの慢性期リハビリテーションとして、日頃使われなくなった筋肉と神経を活性化するパワーリハビリが著しい効果を上げている。

筋力トレーニングとパワーリハビリテーションの違い
筋トレというのは、動ける人へのトレーニングです。すでに動ける人がより強力になろうとするためのトレーニングです。しかし、パワーリハというのは、実は動けない人あるいは動く能力の低い人を活発に動けるようにするというのがコンセプトです。人が歳をとると、ひょっとつま先が床にひっかかるときがあります。それは足を挙上する筋力が低いのではなく、固有感覚刺激のいわば神経と筋の協調性の問題としてとらえることからパワーリハが始まります。また高齢者になると、骨・関節にいろんな障害がでてきます。少し腰も曲がってきて、股関節が軽い拘縮を起こしてくると、膝が十分に伸びなくなる。そうなると、日常の歩行が損なわれていくことになります。

パワーリハでは筋・関節周囲組織の伸張という動作性からアプローチしていきます。
老化とは、普段動かしていない筋肉と神経のシステムが身体中に増えていくことらしいということが分かってきた。その使われていない筋肉と神経をもう一度活動状態に戻していくのがパワリハビリの基本的な考え方である。
この筋肉と神経の活性化をきっちりと確実にやるためにマシントレーニングを行うのですが、マシンは筋肉強化の目的ではなく、使わないで眠っている筋肉を使う状況にもっていくためのものです。

使用するマシンは一見、フィットネスクラブにあるトレーニング機器に似ていますが、医療用に開発されたものでリハビリを行う際などに用いられるためにウェイトの調整・左右のバランスなど、たいへんデリケートに作られていて、虚弱者から要介護5までの重度な人にも使えるようになっています。

それによるリハビリは運動学的にいうと、低負荷反復運動です。

[事例] 70歳男性
クモ膜下出血を発症し、血腫除去術実施。自宅退院時の状況は、移動は車椅子を使用し、胃ろう増設、ほとんどの日常生活に介助を必要とする。要介護度認定は「要介護5」であった。退院後のサポートは訪問リハと外来リハの併用で、通常の個別訓練によるリハ実施により、短距離ではあるが杖歩行が可能となったところで、パワーリハ開始となった。


 トレーニングとして取り組んだ内容は、@下肢と体幹を中心とした筋力強化AバランストレーニングB耐久性トレーニングCテニスなどのご本人の希望されるスポーツの要素的動作練習である。数値的な変化としての改善は、特に、バランス能力や歩行継続距離、スピードにみられた。                                    
 実施後の生活状況は、家屋内の移動は自力歩行で可能、屋外は監視レベルで歩行、ADL自立となる。要介護認定は「要介護2」となった。行動変容は自宅生活行為の改善のためのリハ中心の生活内容から、趣味や行動が目的の生活へとどんどん変化していった。

 以上は、報告されたパワーリハの一事例にすぎないのですが、このような可能性を持つパワーリハはまだ取り組みがはじまったばかりですの。

以上の様な現状ですが、私は『パワーリハビリ』をもっと広義に定義しその一分類として現在の高齢者対象の『シルバーパワーリハビリ』の分野があり、高齢者ではない対象の『パワーリハビリ』が位置づけられるものではないかなと思います。
特に、『パワーリハビリ』が単に筋力のUPではなく精神的なリハビリや社会生活なども大きな目的であるならそこに大きな違いがあるのではないでしょうか?
自分もこれを機会に、このことをもっと考えできることを実践していきたいと思い始めました。
みなさんは、どう考えましたか?


(2003年05月11日)
  グリアTOP

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